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vol.87 空想

結婚して、義理の親とたまに出かける事があった。それは食事だったり、どこかの観光地だったりした。塔子は早く彼らに打ち解けようと、常に笑顔で彼らに接した。そもそも、始めから、無理をしていたのだ。付き合いを頑張っている限り、自ずとそこには無理が生じるものだ。しかし、無理の何が悪いのか、その時の塔子には全くわからなかった。むしろ、頑張って合わせようとしている自分が正義で、いつも自然体でいる姑や舅の方が悪のように感じていた。そしてそれらの発散される事はない、悶々とした気持ちを抱えて生きている事に罪悪感さえ感じていた。それは、自分でも処理出来ない、複雑な感情であった。

彼らを、心底疎ましく思う事も多々あった。しかし一方で、そんな感情を抱く自分に腹も立つのだ。至らない自分を責めるのだ。誰も反省を求めてはいないのに。彼らの不愉快な言動で嫌な気分になる度に、そう思ってしまった自分を汚く思うのだ。何故、自分はこうなのだろう? 何故、自分を殺してまで人に合わせようとするのだろう? そして、こんなに頑張っているにも拘わらず、何故彼らはそれに気付きもしないのだろう? 気付きもしないどころか、無神経な発言を繰り返すのだろう? 何故自分ばかりがいつもその無神経さを受け止めてやらねばならないのだろう?

我慢をするのが当たり前だと思っていた。幼い頃から、それは自然に身に付いていたものだ。生まれもっての性格なのか、環境がそうさせたのかはわからない。ただ、自分にそれが出来るのに、自分よりはるかに年上の彼らが出来ない事をいつも疑問に思っていた。無理をしているのが、我慢をしているのがいつも自分だけ、という状況に違和感を覚えていた。

そういった感情は、心の片隅でひっそりと芽生え、巣くっていった。義理の両親にはそんな素振りをおくびにも出さなかった。周りの誰にも出さなかった。塔子自身、彼らの無神経な言動に戸惑ったり傷付いたりしながらも、そういった関係性について深く考えたりはしなかった。何しろ他に考える事は山ほどあったのだし、それらが悩み事の筆頭に立つ事は決してなかったからだ。仕事の事。配偶者との関係性。実母の事。それらは常に塔子の頭の中で渦巻いていたが、義理の親の事などでは深く悩むのも馬鹿らしいと思っていた。時折会って、嫌な気持ちにさせられる。所詮、その程度の関係性で、物事の優先順位の最前列に並ぶ事は決してない。

ただ、今になって思うのだ。
数々の飲み込んだ言葉を、いつも吐き出せていれば、未来は今とは変わっていたのかもしれない、と。
蓋をし、何も気付いていないふりをしていたが、それらをその都度解放していれば、結果は違ったものになっていたかもしれない、と。

それは、愚かな空想だ。現実はいつも自分の出した答えの元にあるのだから。自分は我慢をした。我慢を重ね、それを善行のように感じていた。その結果が今、この時、この状況、現実なのだ。人は、自分の行いに、責任を取らねばならない。たとえ、なんらかの被害者であったとしても。自分の生き方を無意識に選び取っていた責任を負わなければならない。

誰に? 自分にだ。

義理の両親に誘われ、食事へ出掛ける。彼と、子供達も一緒だ。たまに、彼の姉も来る事もあった。彼らは塔子にはわからない思い出話を一頻り始める。いつもの事だ。浮かべている笑顔が張り付く。食事を終え、会計の際になると、塔子は御馳走でした、と彼と共に頭を下げる。義理の姉はその姿を見て、ふふふ、と笑う。義母は鞄からおもむろにクーポン券を取り出す。
「あぁ。この子の分だけ、割引が効かない」
義母は塔子を指差してそう言う。義姉は聞こえないふりをする。義父はまぁまぁ、母さん、そう言ってやるなよ、と優しく寛大に、心底嬉しそうな表情を浮かべながら、やんわりと諭す。そしてこちらを振り替えって、まるで失敗をしてしまった子供に優しさを持って注意を与えるかのように、義父は言う。
「一人くらい、定価で食べたっていいんだよ、塔子ちゃん」

お決まりの儀式が、一通り行われる。



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しろ☆うさです

いつも最後までお読み下さり、ありがとうございます

今回のおはなしは、一話読み切り。

タイトルは「空想」。

うん。いつものように思い浮かばなかったので簡単に本文から取ったのですが、こんなタイトル付けちゃうと、内容がまるで塔子ちゃんの空想か妄想みたいに勘違いされちゃうかもなー。

ま、いっか(笑)。思い付かないし(笑)。

えーっと。ここで断っておきますが、このおはなし、別に塔子のヤバイ妄想とかじゃないので……ってわざわざ言わなくてもいっか(笑)。

いつもお越し下さる方、そして拍手やランキング等を押して下さる方、本当に感謝しています。ありがとうございます!

しろ☆うさでした~~♪(o・ω・)ノ))



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