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vol.51 震える父 2

愛情を量る事は出来ない。満タンだと思い込んでいただけで、そもそもその器が小さかったのだと気付く事もある。

何年も会っていなかった父から連絡が来た。会社を早期退職し、田舎へ移り住むという。塔子の結婚式にも来なかった父が、引っ越す前に会おうと言って来たのだ。
「孫にも会ってみたい。一度も会っていないから」

受話器の向こうから聞こえる父の声は屈託なく、一切の罪も罰も責任さえも、何も感じていないようだった。自らに非があると認識していれば、こんな風に軽く電話を掛けてきたりはしないだろう。父は、何もわかっていないのだ。自らの都合で家族を途中で手放した事に、負い目は全く感じていないのだ。

何もわかっていない者に、一体何が言えるだろうか。目上の者に対して倫理を説く必要が、果たして自分にはあるのだろうか。
父と別れてからの出来事が、頭の中を駆け巡った。確かに、苦労もあった。それを一つ一つ並べて見せたところで、今更それが何になる? 文句を言ってスッキリするとも思えない。きっと、父は私の発言を理解してはくれないだろう。それどころか、自分の身に起きた塔子の知らない数々の苦労話で、塔子の話はかき消されてしまうのだろう。

言うだけ、無駄なのだ。言ってわかる相手ならば、そもそもこんな結果になっていなかったはずだ。

電話という短期間で選択を迫られる手段を用いられ、結局塔子は父と会うという決断をした。
もう、これきり会う事はないのかもしれないという安堵感、そして、ほんの少し自分を責める気持ちからの承諾だった。確かに、自分は父に一度も孫には会わせていないのだ。それは父の都合であって、塔子の責任ではないのだが、会わせて欲しいと言うものを、拒む権利もないと思った。

それに、それは不思議な感覚であったが、心の奥の奥、どこか片隅で、搭子は子供達を自分の身内に会わせてみたいという、小さな願望のようなものが芽生えたのだ。その感情がどこから来て、どこへ向かおうとしているのかは、わからない。しかし、それは不意やって来て、当たり前のように搭子の胸の内に住み着いてしまった。子供達にとって、おじいちゃん、おばあちゃん、は彼の方の祖父母を指す。子供達は搭子の母にはなついてはいない。滅多に会わないのだから、当然といえば当然の話なのだ。仕方がないと割りきってはいたものの、どこか寂しさを感じていたのも事実だ。

父に期待をしてはいけない。搭子は自分に言い聞かせ、セーブをした。いつもいつも、あの人にはがっかりさせられてきたじゃないか。平気で責任を放棄するような人間ではないか。親として、そもそも人として、間違いだらけの人間だったではないか。
それでも、搭子は想像を止める事が出来なくなっていた。実際に子供達に会ったら、父は、一体どんな顔をするのだろう? どんな様子で、どんな言葉をかけるのだろう?

私にだって、父がいる。私にだって、母がいる。たとえ彼らが足を引っ張るだけの迷惑な存在であっても、確かにいるのだ。
そういう気持ちを、形として、どこかで誇示したかったのかもしれない。

雨上がりの五月のある日に、搭子と父は数年ぶりに会った。街は明るい日射しでキラキラと輝き、光の帯が至る所に祝福を投げ掛けていた。アスファルトは黒く濡れていたが、この陽気では直ぐに乾いてしまうだろう。
二歳の沙耶の手を繋ぎ、生まれたばかりの海斗を抱っこして、搭子は父と待ち合わせている場所へと向かった。


※このおはなしは、「震える父」シリーズの続きとなっております。

震える父 1



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しろ☆うさです

最近、まだまだ忙しく、なかなか書く時間が取れません……(言い訳w)

あ、でもパンパンに腫れていたリンパがやっと治まって、一安心しているところです

このまま一生治らなかったらどーしよーってちょっと焦っていたので、よかったよかった(笑)!

で、今回のおはなし……・。

「震える父」。意味不明な題のおはなしの2作目です。

今回で〆る気満々だったのですが、これもじっくり書きこんでみよっかな……という気持ちになり、またまた次回持ち越しとなってしまいました……

きっと、次の3作目で完結する?と思います。

いつも訪問して下さる優しい皆様、そしてブログランキングや拍手などを押して下さっている方に、心から感謝しています

これからも細々とやっていくので、気長に見守って下さいm(__)m

ではでは! しろ☆うさでした~~(*^^)v



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