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vol.46 母の入院生活 3

事態が急に悪化する可能性。最悪の結果も有りうる、と言われた急性期を脱した母は、その後一般病棟へと移された。命は取り留めたが、身体は半身不随となり、起き上がる事も座る事も、何も一人では出来なくなってしまった。リハビリ病院への転院を勧められ、状態を確認しにそこから医師と看護師らしき人がやって来た。審査が行われ、そこへ転院する事が決まった。

転院の日も決まり、塔子は子供達の居場所の確保をしておかなければならなかった。初めての転院。初めての病院。一体、どのくらいの時間が費やされるのか、全く見当が付かなかった。小学校へ上がったばかりの沙耶は、まだ授業数が少ないので、2時半くらいには学校を出て帰って来る。海斗は幼稚園児で、まだ一人で帰って来る事は出来ないので、自分が迎えに行かなければならない。園が終わるのは2時だ。それまでに今現在入院している病院の退院手続きを済ませ、新たに入院する病院へ母を連れて行って、そこで入院手続きを取らなければならない。一体、どのくらいの時間が必要なのだろう?

沙耶に鍵を持たせたところで、海斗を迎えに行かねばならないから、同じ事だ。この日はどうしても都合が付かないから、悪いけど放課後教室に行ってくれないかな? と塔子は娘の沙耶に頼んだ。沙耶はみるみる不機嫌になった。
「あそこは嫌っ! 前に友達と覗いてみたけど、大きい子ばかりで1年生は全然いなかったもん! あんなとこ、行きたくないっ!」
「大きいお姉さんやお兄さんに遊んでもらったらいいじゃない」
「きっと、相手にされないもん」
「じゃあ、本を読んだら? 漫画も置いてあるって言ってたよ」
「嫌っ! 本なんて、読みたくない! なんで残らないといけないの!」
「……ねぇ、別に毎日じゃないんだよ。たった、一日だけの事だから。それくらい、我慢出来るでしょ? お母さん、なるべく早く帰るようにするから。早く終わったら、学校まで迎えに行ってあげるから。それでも、ダメ?」
「う~ん……」
納得がいかない沙耶をなんとか言いくるめたが、沙耶はいつものメンバーで放課後遊べない事を、いつまでも愚痴っていた。塔子は海斗に向き直った。
「ねぇ、海斗。この日、お母さん、いつもの時間にお迎えに行けないんだ」
塔子はカレンダーに○印を付け、海斗にわかるように説明した。
「だからね、幼稚園に居残り保育、してほしいの。幼稚園にはもう連絡してあるからね。わかる?」
「えっ!? イノコリホイク……って……何?」
不安そうな表情を浮かべて、海斗はカレンダーと塔子の顔を交互に見比べた。
「あのね、先生さようなら、をした後、たんぽぽさんのお部屋に行ってほしいの。そこでお母さんが来るまで他のお友達と先生と一緒に待っててほしいんだ。……出来るかな?」
海斗はびっくりしたような顔になり、ぽかん、と塔子の顔を見つめ続けた。やがて、どんぐりのような目に、いっぱい涙の粒が浮かんだ。
「……えっと……えっと……カイくん……カイくんは……無理よ」
そういうのがやっとで、海斗はうーっと声を詰まらせ、泣きじゃくり始めた。引っ込み思案でおとなしい海斗は、沙耶とは違い、あまり自分の意見を言わない子だ。塔子は海斗を抱っこして、優しく背中をトントンと叩いた。
「大丈夫だよ。カイくんなら、出来る! だってもうお兄ちゃんだもん! もう年中さんになったでしょ?」
「……でも……でも……うーっ! ううーっ!」
「年少さんなら無理でも、年中さんのカイくんなら出来ると思うなぁ。だってもうお兄ちゃんだもんねぇ」
「む……無理よ……。カイくんは……無理よ」
海斗を抱っこしたまま立ち上がり、塔子はリズムをつけながら、リビングの中を歩き回った。
「出来るよ! 大丈夫! カイくんなら、出来る! やれば出来る!」

してもらわねば困るのだ。自分は、一人しかいない。沙耶の帰る時間に家にいて、海斗のお迎えにも行って、尚且つ母を転院させる……同時に出来るはずはないのだ。
それに、もう6歳と4歳なのだ。生後二週間でフルタイムで保育園に預ける母親だって世の中にはいる。それに比べれば、この子達はなんと恵まれている事か。なんと甘やかされている事か。
頭ではそうわかっていても、塔子の胸は自責の念でいっぱいだった。まるで自分の不注意で子供達を悲しい目に合わせてしまったような気分だった。ごめんね、ごめんね、と思わず声に出して言ってしまいそうだった。

汗と涙でぐちゃぐちゃになった海斗は、やがて泣き疲れたのか、そのまま眠ってしまった。片手でクッションを取り、そこに海斗をそっと寝かせた。
「カイくん、寝ちゃったねー」
沙耶がやって来て、寝ている海斗を覗きこんだ。
「ふふ。可愛い。ほっぺがプクーってしてるよ」
「ほんとだね」
二人はしばらく眠る海斗を見つけ続けた。


※このおはなしは「母の入院生活 」の続きとなっております。

母の入院生活 1

母の入院生活 2



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いつも最後まで読んで下さって、ありがとうございます

パソコン直って、超打ちやすくて、ルンルンのしろ☆うさです

やっぱねー。スマホじゃ無理だわ(笑)。めちゃ時間掛かる

パソコン、サマサマですね(笑)。

今回のおはなしは、「母の入院生活」シリーズです。

なんか……本文に塔子ちゃんのお母さん、出てきてないし(笑)。題と内容が合ってないですよね……

まぁ、でも、それにまつわる?内容なので……これでよし、とします(笑)。

ここを省いて書くと意味がなくなるような気がするので、ね。

そういえば、お気づきの方もいらっしゃるかと思いますが、先日、カテゴリを整理したのですよ

前々からずーーーっと気にはなっていたのですが、手つかずのまま放置状態でして

今回、一念発起し? シリーズごとにまとめてみたので、よかったら読んでみて下さいね

シリーズで続けて読むと、新たな発見? もあるかもです♪

  「一話読み切り」は現在23話。

  「閉ざされた空間」シリーズは、全二話で完結しております。

  「回る世界」シリーズは、全二話で完結しております。

  「真夜中に走る自転車」シリーズは、全四話で完結しております。

  「母の思い出」シリーズは、現在三話。未完です。

  「引っ越し」シリーズは、現在四話。未完です。

  「根なし草」シリーズは、現在四話。未完です。

  「母の入院生活」シリーズは、今回で三話。未完です。

  「震える父」シリーズは、現在一話。未完です。

こうして改めて分類すると、結構書いていたのねーってちょっとびっくり(笑)。継続は、力なり?

いつも訪問して下さる皆様、そして拍手やブログランキングを押して下さっている方、本当に感謝しています

しろ☆うさでした~~(^O^)/



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