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vol.43 根なし草 4

階段を上ると、そこは辺り一面に広がる、美しく整備された墓地だった。昔ながらの墓地のイメージとは全く違い、掘られた文字も形も様々だった。自分で好きな言葉や形式が選べるのだろう。野外であるにもかかわらず、静かなクラッシック音楽がどこからともなく流れている。宗派を問わないとホームページに書かれてあった通り、洋式の墓や英語文字も数多く見受けられた。どこもかしこも真新しく、まるで墓地らしさのない、明るく開放的なところであった。

事務所は寺の横に建っていた。塔子を先頭に、弟、そして彼の順で、中に入る。名前を告げると、受付けの人が応接室へと案内してくれた。そこには簡単な仕切りで遮られた見学客用のテーブルが、五つほど並んでいた。他に見学に来ている者はおらず、塔子達は一番手前の席に着いた。
「係の者が来ますので、しばらくお待ち下さい」
彼女はそう言って、去って行った。三人だけになると、塔子はテーブルの横に備え付けられていたパンフレットに手を伸ばした。そこにはホームページで確認しておいた、だいたいの事が大まかに書かれてあった。
「失礼します」
先程案内をした受付けの若い女性が、再び現われ、お茶を置いて一礼して消えていった。塔子はそっとそれに口を付けた。喉がカラカラに渇いていたのだ。
「お待たせしました」
次に顔を出したのは、黒いパンツスーツを着込んだ中年の女性だった。彼女は名前を名乗り、名刺を塔子に渡した。
「本日はこちらのご説明と、ご見学という事でよろしかったでしょうか?」
「はい」
「永代供養の方とお聞きしておりますが、そちらでよろしかったでしょうか?」
「はい。そうです」
「えー……お電話のお話では、確かお母様の……?」
「はい。そうです」
一瞬、間が空き、その女性は塔子の顔をチラッと見た。きっと、ここに来るには、塔子はあまりにも若すぎるのであろう。思わず言葉を失うほど、物珍しい存在なのだろう。
「……では、説明させて頂きます。当方では……」
彼女はパンフレットを開き、そのシステムの説明に入った。ちょうどその時、新しい見学客が二人、応接室に入って来た。60代くらいの夫婦は塔子達の横を通り、一番奥の席に着いた。彼らにお茶が出される頃になると、もう一組、別の見学客が現われた。彼らも60~70代くらいの夫婦で、おそらくその娘であろう40代くらいの娘と共に、開いている席へと腰を落ち着けた。

あの娘さんは、私より遥かに年上みたいだけど、それでもまだ「娘」として、おまけの立場でここへ来れるんだな。
説明を聞きながら、ふと塔子はそう思った。主体的にではなく、付き添いとして。親と共に。

しかし、それは一瞬の出来事で、塔子はまたもや目の前で説明をする女性の話の方へ、意識を集中させた。

説明が終わると、席を立ち、墓地内の見学へと出向いた。ここが先程の……、こちらが先程申し上げた……など、彼女は一つ一つ丁寧に塔子達に説明した。静かで清らかな空気が漂う。川のせせらぎの音と共に、クラッシック音楽が流れる。真新しい墓には愛の溢れる優しい言葉が刻まれている。ここしかない。塔子は目を閉じた。行き場のない母は、きっとここに来る事になる。係の女性を先頭に、四人は再び事務所へと戻った。塔子は席に戻ると鞄から印鑑を出し、申込書に名前を書き入れ、判を付いた。

その翌日、病院から電話が掛かってきた。母が危篤だという知らせだった。


※このおはなしは、「根なし草」1、2、3の続きとなっております。

根なし草1

根なし草2

根なし草3



↑いつもありがとうございます

いつも最後まで読んで下さって、ありがとうございます

しろ☆うさです

今回は「根なし草」シリーズの続きのおはなしとなっております。

早いもので、今回でもう4作目となりました!

この「根なし草」シリーズは一旦ここで締めさせていただこうと思っております。

いや、まだ続くのですが、「母の入院生活」シリーズがね……思っていたより進んでないから(笑)。「根なし草」って「母の入院生活」以後の話というか、最後はまぁ、重なる感じにリンクする予定なんですが、「母の入院生活」シリーズがまだ序盤なので……しばらく放置しようかなと思います(笑)。

5作目書く頃にはもうこのシリーズがあった事すら忘れられているかも!?ですが

「母の入院生活」シリーズはかなり長くなると思うので……。

あ、途中で飽きられない?ように、違う短編も交えながら、書き進めて行きたいと思っています

このブログ、「若者介護」や「モラハラ」や「母と娘の関係」なんかを題材に書かせてもらっているのですが、いかんせん「母の入院生活」を書き進めていかないと、「モラハラ」も「親子関係」も絡めない部分が多々ありまして……。

なので、「母の入院生活」シリーズ、これからはメインに頑張っていこうと思っておりますっムキッ

う~~~ん。しかし、ブログ初めてもうすぐ半年……。いつまでたっても塔子ちゃん、幸せにならんがな

予定では、まだまだ幸せとは程遠い出来事が、わんさか待っているんです

「幸せ」はなるものじゃなくて、自分で掴み取るもの。って塔子ちゃんが気付くまで、もうしばらく待ってやって下さい……って、気付く頃=「ひとしずく」のエンディングだと思われますが……(笑)。

いつも訪問して下さる方、そして拍手、ブログのランキングをクリックして下さる方、本当にありがとうございます

感謝しています

これからもおはなし「ひとしずく」、どうぞよろしくお願いしま~す(^O^)/



↑いつもありがとうございます
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