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vol.23 回る世界 2

病院に着くと、そこはかなり混んでいるようだった。彼の肩を借りながらフラフラと入口に入ると、見兼ねたのだろう、職員が車椅子を持って来てくれた。
「救急から先に呼ばれますので。申し訳ないけど、ここに座ってしばらく待っていてね」
自分を気遣ってくれたその人の顔を、ちゃんと見てお礼が言いたかったが、首を上に起こす事も出来ずに、塔子は項垂れたまま、はい、ありがとうございます、と言うのがやっとだった。

いつまで続くのだろう。目を開けても、閉じていても、世界はグルグルと回る。回り続ける。
一時も、それは止まる気配を見せない。
せめて目を閉じている時だけでも、この高速回転から逃れられればいいのに。それは執拗に塔子に食らいつき、暗闇の中でも決してその力を緩めようとはしなかった。

長い時間待たされ、診察室へと入った。医師は小さなペンライトで、塔子の眼球の検査をした。
「まだ、眩暈、治まらない?」
「はい……回ってます」
「そうだよね。眼球がずっと動いてるもの」
医師はペンライトを仕舞い、指を一本立てた。
「目を開けるの、気持ちが悪いだろうけど、ちょっと我慢してここを見て」
塔子は医師の指を見た。医師は指を見ようとする塔子を観察した。
「おそらくメニエールだと思います。まだ若いし、脳から来る眩暈ではないと思いますが、一応念の為今から検査された方がよろしいかと思います」
「わかりました」
塔子はCTスキャンを受けた。中は、ひんやりと冷たかった。結果、脳に異常は見当たらなかったが、依然として眩暈が治まる様子が見受けられないので、しばらく入院して下さい、と塔子は告げられた。

まだ二歳の甘えたい盛りの沙耶と、生まれたばかりの海斗の顔が浮かんだ。だめだ。入院は出来ない。この眩暈が治まるまで、一体誰があの子達の面倒をみるというの? いつまでこの眩暈が続くかわからないのに? 何日も何日も治らなかったら、子供達はどうなるの?
しかし、実際問題、自分が帰ったところで、一体何が出来よう。ただひたすら、この激しい回転性の眩暈がどこかへ消え去ってくれるまで、じっと横たわっている事しか出来ないだろう。ご飯も作れない。洗濯も出来ない。おむつを替える事も出来ない。おっぱいをあげる事も出来ないだろう。
塔子は入院する決心をした。

その眩暈は翌日も、そのまた翌日も続いた。三日目の夜、彼がお見舞いに来た。
「まだ、治らないの?」
「うん。まだ回ってる。子供達はどう?」
「沙耶はオレのお袋に懐いてるよ。元気にしてる。海斗にはミルク飲ませてる。で、いつ治るの?」
「……いつだろうね……」
「オレのお袋が限界みたいなんだ。早く退院して子供達を引き取ってくれないと、自分が倒れてしまうって」
「……うん。わかってる……」

塔子は自分の母親に電話をかけた。母は電話に出なかった。その後、数回にわたって電話をかけたが、虚しく呼び出し音が響くだけだった。結局、母は電話には出なかった。塔子は諦めた。

四日目になると、フラフラするが、激しい回転は治まりつつあった。塔子は退院の手続きを早急に済ませ、子供達を引き取りに行った。退院したその夜、40度以上の高熱が出たが、塔子はもう誰にも言えなかった。言ったところで、何が変わるというのだろう? 母が電話をかけてきたので自分が入院していた事を告げたが、もう退院したんだから大丈夫だね、と言って真剣に話を聞く姿勢は見せなかった。義理の両親の元へ子供達を引き取りに行った時も、愚痴は聞かされたが、塔子を気遣う言葉は一切なかった。彼に至っては「早く退院してくれないと、オレとオレの親が困る」の一点張りだったのだ。

数日後、完全に眩暈が治まった頃、彼がくすくす笑いながら話をし始めた。
「お前を運ぼうと持ち上げた時、あまりに体が重くなっていて、正直落としそうになったよ」
「真冬なのにお前、汗だくでさ。正直、引いたよ」 
彼はさも愉快な話を披露するように塔子本人にそう告げ、満面の笑みを浮かべた。



↑ありがとうございます


いつもお読み下さり、ありがとうございます しろ☆うさです

いやぁ、書いていて、ムカついてきました(笑)!
読んで下さっている方を、不快な気持ちにさせていたらごめんなさいm(__)m
……でも、このブログ、いつもこんな感じの内容なんですー(笑)。

塔子は現状から突破出来るのか!?
まだまだ続く「ひとしずく」、どうぞこれからもよろしくお願いします

このおはなしは、vol.17 回る世界 1 (10/11)の続きとなっております♪



↑ありがとうございます
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