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vol.1 新しい生命の誕生の過程

それは、凄まじい痛みだった。
今までかいた事がないほどの、大量の汗が、額を、背中を、幾筋も伝う。
これは、戦いだ。命をかけた、戦いなのだ。
塔子は歯を食いしばり、ひとり、痛みと戦っていた。

果てしない、長い時間。一体、私はこの「痛み」と、いつまで向き合わなくてはならないのだろう?
この戦いに、終わりはあるのか。
目には見えないこの敵は刃のようだ、と塔子は感じていた。

そう、それは刃だ。それは、4本、突き刺さっている。
腹の中央に一本。そして、背中。左と右のわき腹にも、一本ずつ。
それらは目には見えない。しかし、確実に自分を蝕んでいくのが、塔子にはわかる。
その4本の刃は、時折、グルグルと狂ったように回転を始める。
塔子は絶望のあまり、悲鳴をあげる。
これが夢ならどれだけよいだろう。しかし、これは現実なのだ。この痛みがまだまだ続くのならば、私はもう、死んだほうがましだ。この痛みから逃れられるのなら、そう、死すらたやすい事なのだ。

死んだってかまわない。この痛みから解放されるのであれば、自分の命すら、捨てたってかまやしない。
しかし、塔子にはそれが叶わなかった。もう、自分で起き上がる事が出来ない状態であったし、ドアの開く音がしたからだ。
「本当に、呼ばなくていいの?」
自分と同じ歳くらいの、若い看護師が笑顔で塔子を覗き込む。塔子は首を縦にふった。
「……それより、後どのくらい?」
「う~ん。もう、そろそろ、かな。先生、起こして来るね」
彼女は再び出て行った。誰もいなくなると、遠慮なく叫び声を挙げられる。
しかし、ドアの向こうには、彼がいる。こんな薄い壁では、私の悲鳴は筒抜けだろう、と塔子は思う。



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